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民法改正で変わる賃貸経営

コラム

 

2017年5月、民法の一部(債権法)が約120年ぶりに改正され、いよいよ今年4月1日から施行されます。

 

この民法改正が賃貸経営へ与える影響について、主要なものを今月号より複数回に分けてご説明します。

 

今回は「保証契約」の改正点について取り上げます。

保証契約とは、保証人が賃借人の債務を負担することを約束するものです。実務上は、連帯保証人との連帯保証契約になります。

 

 

◆保証人の責任

 

これまで賃貸借契約を締結する際に、家賃滞納などに備えて、連帯保証人を付けることが一般的に行われてきました。

 

そのため賃借人(借主)が家賃を滞納した場合、際限なく、連帯保証人が滞納分を支払わなければなりません。

 

 

賃貸人(貸主)の立場からすれば賃料全額を支払ってもらうのは当然のことですが、思いもよらなかった重い負担が連帯保証人を苦しめることもあります。

 

現行法では、お金の貸し借りの際の貸金等について個人が根保証契約をする場合、極度額(責任を負う上限額)を定めなければならないとされていますが、賃貸借の連帯保証人には負担すべき上限金額に関する規定がなく、膨大な滞納家賃を全額肩代わりする場合もあり得ます。

 

改正法では、賃貸借の個人保証についても、極度額を定めなければならないこととされました。

 

今年4月1日以降、新規の賃貸借契約において個人保証人がいる場合には、

契約書に保証の極度額を明示しなければなりません。

 

これにより連帯保証人を依頼された人が、自分が保証すべき金額を認識したうえで連帯保証人を引き受けることになります。

 

◆極度額の設定

では極度額は一体いくらに設定すれば良いのでしょうか。

 

賃貸人(貸主)側は「どんな損害が発生しても大丈夫な金額」を設定したいところですが、連帯保証人からすれば多額の保証をすることは避けたいと考えるでしょう。

 

 

賃貸借期間が2年であれば「賃料の24ヶ月分相当額」と考えることもできます。

例えば、賃料が10万円であれば保証の極度額は240万円と契約書に記載されます。

 

これは連帯保証人から見れば、心理的に躊躇してしまうかもしれません。

せっかく入居申込みを頂いても、連帯保証人引受の承諾が得られなければ入居申込みそのものがキャンセルとなり、結果として空室期間が伸びてしまう可能性が生じます。

 

既に当社管理物件における新規の契約では、個人ではなく法人による保証(家賃債務保証会社)を原則付帯しており、そのリスクを回避しています。

 

今回の民法改正により「賃貸借契約には連帯保証人が必要である」という従前の常識が「保証会社を利用するものである」という考え方に変わっていくものと思われます。

 

◆契約更新時の改正法適用ルール

 

ここまで「賃貸借契約」と「保証契約」を一体として説明しましたが、法律的には別々の契約です。

今年3月31日以前に締結した賃貸借契約を4月1日以降に更新する場合に「保証契約」に関するルールは次のとおりです。

 

①現行法による保証契約が更新後の債務も保証する趣旨でされ、保証について合意更新されなかった場合

 →その後も保証契約について現行法が適用されるので、極度額の設定は不要です。つまり、改正後に新たに保証契約を締結していなければ、保証契約については旧法が適用されるので極度額の定めは不要です。

 

②改正後に保証人から新たに署名捺印をもらって更新契約する場合

 →極度額の設定が必要となり、極度額の設定をせずに更新契約をすると保証契約が無効となる恐れがあります。

 

 

 

◆元本の確定

改正法では、債務者(借主)または保証人が死亡したときには、保証契約の元本が確定することとなりました。

 

例えば、賃借人(借主)または保証人が死亡した場合、賃貸借契約は継続しますが、その時点で元本が確定します。

そうすると、その時点の債務(滞納賃料等)のみを保証し、それ以降に発生する債務は保証の範囲外となってしまいます。

 

実務的には、契約書上、賃借人(借主)または連帯保証人が死亡したときは、速やかに賃貸人(貸主)に対して報告することを義務付ける定めを設ける必要があります。

しかし、現実的な対応には限界がありますので、今後ますます保証会社の重要性が高まると考えられます。

 

◆債務の履行状況に関する情報提供義務

 

魁夷栖鳳では、賃貸人(貸主)は保証人から請求があったときは、賃借人(借主)の賃料支払状況など一定の情報を提供する義務が規定されました。

 

 

これを賃貸人が怠り、保証人が損害を受けたような場合には、保証人は賃貸人に対して損害賠償請求を行うことができます。

 

上記以外にも、「敷金」「原状回復義務」「賃借物の修繕」などに関する規定が改正されており、次号以降でお伝えする予定です。

 

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いよいよ年度末を迎えます。

職場や学校が変わり、引っ越す人が増える季節です。 

しかし今年は「新型肺炎」の流行で、例年よりも世の中が停滞しているようです。

弊社では「接客スタッフのマスク着用」「手指のアルコール消毒」「満員電車を避けるため時差出社」など感染予防に努めてまいります。

皆様も体調管理に気をつけてお過ごしください。